Scott Henderson

●幼少時代のことを教えてください。
正直に言って、あんまり幸せな子供ではなかったんだ。子供の頃より今の方が断然幸せだね。僕は母親が好きじゃなかったんだ。
●ギターをはじめたきっかけを教えてください。
Led Zeppelinをラジオで聞いたときのことをよく覚えてるよ。僕が若いときには、当時としてはかなり前衛的な音楽をラジオで流していたんだ。
Led ZeppelinやDeep Purpleのようなね。それで僕は、Led ZeppelinのWhole Lotta Loveのソロを聞いて「これはまさに僕がやりたいことだ」と思ったんだ。そして僕のお父さんはプロのギタリストではないけど、カントリーソングなんかをよく弾いていて。だからいつでもギターが家にあって、彼のアコースティックギターを手に取って僕が持ってるレコードの中のソロパートを練習したりしていた。
●ちなみにそれは何歳ぐらいのことですか?
12歳か13歳だったかな。
●いつからプロギターリストとして活動されてきたんですか?
16歳のときに、クラブで演奏し始めたよ。そこはお酒を出すクラブだから、本当はこの年齢では出来ないんだけどね!当時でも18歳になるまでは演奏すべきではないとされていたから。でも、年上の友だちがなんとか僕をクラブに引き入れてくれたんだ。だから、16歳のときに演奏の仕事を始められたんだ。僕の最初の仕事はストリップクラブでだったんだ。すばらしかったよ(笑)すばらしい仕事だ(笑)16歳でストリップクラブだよ。そのクラブにはバンドがいて、そのバンドの曲に合わせてストリッパーたちがストリップをするんだ。基本的にはRolling Stonesの曲を演奏したよ。それとか、Beatlesとか、それで、オルガン奏者が僕より年上でクラブのオーナーとコネクションがあったんだ。それが僕がそのバンドで演奏できた理由だと思う。それは、僕の出身地のフロリダの小さな町では有名なクラブで、そこで僕は6ヶ月ぐらい働いたよ。それが僕の人生初のプロとしてのショーだった。
●その時は学校に通っていたんですよね?
もちろん学生で僕はその時まだお父さんとお母さんのいる実家にいたんだよ。彼らは僕がストリップクラブで働いていたなんて知らなかったよ。
●でも毎晩働いていたんですよね?
そうだよ。彼らは、僕は外でバンドの練習とかなんかをしていると思っていたんだ。プロム(アメリカの学校のダンスパーティー)で演奏するバンドとかなんかのね。僕は嘘をたくさんついたよ(笑)
●ちなみにその時の給料を教えてもらえますか?
そんなにたくさんではないけど一晩50ドルぐらいかな。そんなに多くはない。
●一晩中演奏していたんですか?
一晩3セットぐらいかな。当時のたいていのクラブとかショーは5セットだった。僕が18歳から25歳の間は僕はトップ40のバンドにいたんだけどそのときは一晩5セットで夜の9時から深夜2時まで演奏していたよ。
●じゃあ3セットはいいショーですね?
そうだね。でも、一晩にたくさん演奏した方が上達はするからね。だから基本的にはトップ40のバンドでどうやってショーで演奏するかを学んだ。僕はいつでもMIの生徒たちに学校を卒業したら仕事を得て毎晩バンドで演奏することをすすめているんだ。なぜなら、それが演奏するときに一番早く上達する方法だからさ。練習はそんなには自分を高めてくれない。他のミュージシャンと演奏し、ショーをし、アンプから出るトーンの設定をつかみ、他の人の音と混ざり合って、他の人と仲良くやる方法を学んでいかなきゃいけない。音楽は他の人なしにはできない芸術の形だから。たくさんバンドで演奏してたくさんショーをするほどよりプロフェッショナルになれるんだ。日本ではどうかわからないけど、アメリカにはものすごい数のバンドがいるからバンドで演奏して生計をたてていける。トップ40のバンドで働いたりしてね。それで重要なことは、頑固なバンドには入らないことだ。レコード通りにソロを弾かなくたっていいバンドがいい。当時の自分もお客さんが踊れる音楽を演奏することだけを考えるバンドにいたのを覚えているよ。なぜなら、お客さんは踊れば踊るほど酔っぱらう、つまり暑くなるからもっと飲むんだ。だからクラブのオーナーもダンスフロアがいっぱいになってることが幸せだと思っていた。それでCocaineっていう曲を演奏したときにダンスフロアがいっぱいになってから、僕は15分もソロを引き続けたんだ。あんなにソロを弾いたことなんてないよ。でも、僕にはすごくいい練習だった。ギターの弾き方を学ぶいい方法だったんだ。そして、そういうバンドはまだたくさんあるから、生徒たちにはこういうバンドで毎晩演奏して練習して欲しいと思っているんだ。本当にミュージシャンとして成長するのにいい方法なんだ。実際、Jeff Berlinが初めて僕の演奏を見たのも僕がトップ40のショーをしていたときなんだ。Jeffの友だちが「Scott Hendersonっていうギタリストを見た方がいい」って言って彼をショーに連れて来たんだ。それでJeffが僕が15分のソロを弾いてるのを見たんだ。それから僕たちは一緒にプレイするようになったんだよ。
●毎晩仕事をしていたと思うんですけど、それ以外に駆け出しの頃にしてた仕事の取り方というか、仕事はありますか?
昼間の仕事も時々していたよ。どんな音楽の仕事も安定しているものじゃないからね、1週間仕事がなかったり、1ヶ月ショーの仕事がなかったりもしてたから。フロリダでやってたときの仕事の取り方では3週間ハウスバンドとして演奏して、その後、他のクラブでもハウスバンドとして3、4週間演奏することになったんだけど、その間の3、4週間は何も仕事が無かったりとか、そんなときはお金を稼ぐ為にいろんな仕事をしたよ。当時、僕はでっかいアフロのロングヘアーだったから、普通の仕事はできなくてね。電話を使った仕事をたくさんしたよ。電話をかけてものを売ったり(笑)。あとはお父さんが経営している自動車部品のお店の手伝いもしたよ。父は、「いつでも金に困ったら手伝いに来い」って言ってくれたからさ。それで、エンジンで手を真っ黒にしながら働いたよ!
写真を見せてあげるよ。
おもしろいよ。
これが19歳のときさ(笑)ヒッピーだろ?爆笑だろ?黒人になりたかったんだ。
●黒人の人たちとはたくさん演奏をしたんですか?
何回もしたよ。ファンクバンドでたくさん演奏したからね。
●その当時は音楽の収入はライブ音楽だけでレコーディングなんかの仕事はなかったんですか?
いや、それはLAに来るまではなかったね。LAに来たあともそれほどではなかったけど。LAにはスタジオミュージシャンのグループがすでにいて、そこに割って入っていくのは大変だったんだ。最初に「僕はどうしてもスタジオミュージシャンになりたいんだ」って言わない限りはね。スタジオミュージシャンってのは、町にとどまらなくちゃいけない。町を出てはいけないんだ。なぜかっていうと、もし「今日レコーディングセッションに来てくれ」って言われてそこにいなかったら、他のスタジオミュージシャンが雇われて、その人が次からも呼ばれ続けるからね。だからスタジオミュージシャンは他のミュージシャンとは全く違うライフスタイルをしてるんだ。僕は外で成長したミュージシャンだからスタジオミュージシャン向きのギタリストではないんだ。実はこれは言ってなかったんだけど、Traibal TechのキーボーディストのScott Kinseyはハリウッド映画の音楽の仕事をたくさんしていて、LAでも売れっ子のスタジオミュージシャンで、George ClooneyやBrad Pittが出演している日本でも有名な映画、Oceans11の仕事をしていて、当然続編のOceans12の音楽にもかかわっていたのにOceans13のときに突然、仕事を失ったのもそのせいさ。彼はお父さんが病気で1週間、町を離れたんだ。彼が戻ったときにはもう彼のポジショ ンは他の人に取って代わられてたよ。あまりに残酷だろ。ハードコアな世界なんだ。ミュージシャンなのに会社の仕事って感じだろ?サラリーマンみたいな。
●今までで最高の演奏、最低の演奏について教えてください。
どの演奏もひどいよ(笑)あれはあれよりひどいし、それはそれよりひどいし、いい演奏はないな。僕はあんまり自分自身のファンではないんだよね。自分のレコードは聞かないし、自分の演奏しているビデオもほとんど見ないな。僕をがっかりさせかねないからね。なんか言葉を宙に浮かせといて忘れちゃうぐらいがいいんだ。で、次のときにそれを思い出すみたいな。もし、演奏してるものに集中してしまうと、僕の意見だけど、脳が演奏に向かないんだ、もっと批判的になってしまう。演奏を聞く時、間違いばかりに気がいってしまって、演奏自体に間違った判断をくだしてしまう。自分の演奏を聞くのってあんまり面白くはないだろう?どんな人もそうだと思うよ。自分の声をテープレコーダーで聞いたりさ。聞いててうれしいものではない。だから、僕は演奏することは好きだけど自分自身のファンではないんだ。なかには自分が大好きなミュージシャンもいるけどね。
●でも、例えば、演奏後に「今のは最高のショーだった」とかは思ったりしないんですか?
うーん。「いい瞬間があった」とは言うかもしれないね。それはいつでもいい瞬間なんだけどさ。人生みたいなもんで。いつだってソロを弾くときはソロに対していいところ、悪いところがある。例えば5つのソロがあったら、そのソロのいいところだけを取って一つの最高のソロを作る。それがレコーディングで僕がしていることさ。5つのソロからいいところだけを使ってすばらしいソロを作曲する。でも、最初から最後までそのソロを好きだとは思えないんだ。全てのパートが好きな訳じゃなくて、それでも好きではないところはある。多分それはみんな同じだと思う。それは人生だから。全ては完璧ではない。それはスポーツ選手だって同じさ。フットボール選手がある試合ではどんなボールにもうまく対応して完璧だったのに、他の試合ではさんざんみたいなさ。いいときも悪いときもあるから、それをうまく流していかなきゃいけないんだ。できればポジティブにね。あとは、「気にしない」ことができるように自分自身を鍛える必要もあるんだ。もし、気にしなかったらいつだって最高の演奏が出来るんだ。もし気にしたら、その分だけ悪い演奏になる。例えば、一番重要なコンサートでの演奏は最低で、誰も期待してないような小さなショーでは最高な演奏をするようにさ。そうやって、どのコンサートも関係ないって思えるように自分を鍛えなくちゃだめだ。そこではただ楽しむんだ。自分自身がシリアスになりすぎちゃいけない。脳外科医ではないんだからたとえ失敗したって、誰も死ぬわけじゃない。僕らはただエンターテイナーなんだから。深刻になるように自分をしむけたりせず、究極の目標として楽しむこと、自分のしたいことをすることをかかげるんだ。その姿勢を持ち続けられたら、たいていすばらしい時間を過ごせるし、楽しく音楽を演奏できる。
●音楽以外に夢中になったものはありますか?
犬と映画と5歳の娘だな。子供のときからずっと犬は飼ってるよ。少なくとも1匹、3匹のときもあるけど。ある犬が死んだら次の犬って言う風に、必ず周りに犬はいるよ。
●ギターリストになる以外にいままで他の仕事を考えたことはありますか?
ポルノスターかな。恥ずかしすぎるな。これは。嘘だよ。他に十分上手くできることが思いつかないんだ。もしミュージシャンじゃなかったら、多分音楽業界でギアーやコンピューターなんかに携わっていたかな。僕は機械とかものを修理したりすることが好きなんだ。あとギターが好きだからギターショップとか、楽器を修理するお店で働いたかな。アンプとか機材も好きだからね。そういうのもできるな。もし、ギターリストじゃなかったら。
●音楽に限らず、「この人には一生叶わないなあ」と思う人はいますか?
何百万人といるさ。名前を言ってくのは難しいけど。僕は自分自身をちっちゃいアリだと思ってるんだ。僕より前に現れたすばらしいミュージシャンたちと比べるとね。もしくは今現在存在する何人かのミュージシャンたちとね。これは悪く言いたくはないけど、ほとんどばかげた質問じゃないかな。「誰が君より勝っているか?」なんて。それって、「君より劣っている人は誰だ?」って聞いているのと同じだろ?(笑)
●自分自身が音楽を続けていくのに「この人を超えたい」というのは大切な考え方ではないですか?
いや、それは悲しい現実さ。でも、Scott Hendersonをやらせたら誰にも負けないよ。誰も僕がやっていることをできないし、僕は自分がやっていることを誰よりもうまくやるんだ。なぜって、それは僕だから。誰も僕と張り合うことはできない。僕がやっていることではね。でも、すばらしいミュージシャンっていうのはそこかしこにいる。Herbie Hancockとかさ。大抵のジャズミュージシャンが彼を尊敬している。王様のように見える上級レベルのジャズミュージシャンっていうのがいるもんさ。ロックでもそうだよ。Hendrixとかさ。今日までだって、彼ぐらいすばらしいロックのギタリストはいないだろ?僕は彼に勝るギタリストを一人も知らないよ。彼は自然が生み出した変種なんだよ。すばらしい才能なんだ。それに、Jeff Beck。どうやったら彼よりうまくなれるんだ?HendrixとBeckは今まで存在したロックギタリストで最高な二人だろう。超えられる方法なんてあるかい?その基準があまりにも高すぎて誰も超えられないんだよ。だから、僕がそういった人たちを見たら、自分自身をすごく小さく感じるよ。でも、彼らにだって僕がやっていることはできないんだってわかったんだよ。でもまだ、質のレベルではどんなギタリストも彼らを「すばらしい」と感じるんだ。
●でもいつかあなたの標準レベルも彼らのように高くなりたいと?
僕にとってはそのレベルってのは、テクニックのレベルではないんだ。僕は単にテクニックを多く持っているし、説明する言葉も多く持っている。でも、それってのはすばらしいプレーヤーだっていうのと同意義ではないんだ。僕が言ってるのはプレーヤーとしてのレベルで説明のレベルではないんだよ。例えば、僕より説明することがうまい人だって僕より下手な演奏をする。名前は伏せておくけどさ。僕より2倍の説明能力を持っていても僕の10倍下手なギタリストもいる。同時に、Jimi Hendrixは僕の10分の1しか知識を持っていないのに僕が100万年練習したって彼のレベルには達せないんだ。だから、どれだけ良く知っているかってのは問題じゃなくて、自分が知っていることをどれだけうまく演奏するかって言うのが大事なんだ。それが僕が言いたいことさ。
●これからのミュージシャンにメッセージをお願いします。
演奏するのを今すぐやめて昼間の仕事に就け(笑)。今すぐやめろ。時間のむだだ(笑)。これは冗談だけど、自分の耳でよく聞いて、一個だけのジャンルを聞くのをやめなさい。子供たちの中にはどうしようもないバカがいて、一個のジャンルしか聞かない奴らがいるんだ。それは、とんでもないバカだ。だって、一種類の音楽から新しい音楽を生み出すなんて、自分たちで墓を掘ってるようなもんだ。それはオリジナリティーのない新しいミュージシャンを生み出すだけだからさ。オリジナリティーのあるミュージシャンになるにはほんとにたくさんの種類の音楽を聞いて、それらのスタイルを自分がやっている音楽に取り込むことさ。それが君の声になる。受ける影響は多い方がいいんだ。だから、ジャズもロックもファンクもカントリーもソウルもR&Bもラップも日本の伝統音楽もインドの伝統音楽も全部聞かなきゃいけない。なんでもいいさ。クラシックミュージックだって。なんでも新しく自分の心を開かせるものを聞くんだ。だから君へのインプットを広くしておくんだ。そうすれば君の演奏に与えるインスピレーションも多くなる。たった2つのバンドだけを聞くよりもね。









