河野章宏

2011年3月2日、現在の音楽業界における最重要レーベルの1つ、『残響レコード』の代表・河野章宏さんのオープンカウンセリングが行われました!
学生からの質問に気さくに答えてくれた河野さん。MIのインタビューにも胸の内をあかしてくれました!
音楽を始めたきっかけは?
イングヴェイ・マルムスティーンですね。
メタル好きの僕の母親が地元のテレビ局で流れたイングヴェイの曲を聴いて、僕にすすめてくれたんですよ。彼の音楽を聴いてカッコいい!と思ってギターを始めました。だから僕も彼と同じようにストラトキャスターのギターを使ってるんです。
他にも母親の影響でビートルズとか、オフコースとか、クラシックとかも聴いてました。小学6年の頃の話ですね。まわりでそういう話を出来る人は誰1人いませんでした。実際にギターを始めたのは中学2年の頃で、バンドも同じ学校の音楽好きな仲間と始めました。中学の時は1人で黙々とギターを弾いて、高校に入ってからはライブもやっていました。
ギターの弾き方は誰かに教えてもらったんですか?
そういう人はいませんでした。1日5~6時間は黙々とスコアを見て、ひたすらイングヴェイのコピーをしてましたね。でもバンドをやり始めたら1人でペケペケ弾いているよりもバンドの方がずっと楽しかったです。
その頃から音楽業界で働く事を考えていましたか?
いや、全然考えてませんでした。好きでやってただけだし、今でも夢はパイロットですから(笑)
上京してからの音楽活動はどんなものだったんですか?
最初は大学のバンドサークルに入っていたのですが、サークルの人達があまりにも下手すぎて…。先輩よりも僕の方がギターが上手かったんですよ。同じ風に感じていた同級生が4人いて、その人達とバンドを組みました。そのバンドがきっかけでオリジナルの曲をやり始めたんです。
その後、ライブをやっていたらインディーレーベルから声をかけられて、それから自分達の楽曲をリリースすることになったんですよ。ちょうど就職活動もうまくいっていなかったので、人生を見つめ直す時期でした。その頃「音楽のプロになれればいいな」なんて考えるようになりました。
プロとアマの境目は無い
河野さんが考えるプロとアマの境目は何ですか?
音楽だけをやっていて給料もらえていていれば、プロだと思います。でも実際は境目は無いと思いますよ。僕もいまだに自分がプロだとは思っていませんし。ある日突然、人から「プロ」って呼ばれるようになるけど、自分はそんなふうに思ってないですよ。今は音楽以外のことで働きながら、音楽活動してる人だってたくさんいますからね。
河野さんの『一ミュージシャン』としての心構えとはどんなものですか?
ミュージシャンをやっている時は、完全にミュージシャンの気持ちになってやっています。会社サイドから考えて無理だなと思いながらも、関係無しにマネージャーに「これやってくれ」って求めるみたいなこともしますね。
会社とバンド活動の切り替えは徹底しています。例えば僕のバンド「te'」は「9mm Parabellum Bullet」や「People In The Box」に比べると売れてはいないから、それなりのバンドとしての扱いです。会社の社長であればライブ会場まで新幹線で行ける、でもバンドとしてそんなに知名度が無い「te'」の活動の中では新幹線を使う事は許されない。うち(残響レコード)で新幹線で移動出来るのはZeppツアーができる以上のバンドだけですから。だから朝6時に集合して、みんなと車に乗って会場に行きます。帰りも遠方だったとしても、みんなと同じように車に乗って帰ります。
「社長のバンドだから」っていう予算管理はしません。そうやってちゃんと線を引いて、一バンドとして実力相応のお金の使い方をするようにしてますよ。
ミュージシャンの気持ちを理解する
ミュージシャンをやっていて、社長業にも活きたことはありますか?
それはもう全部ですね。どんなに所属バンドが売れていても、音楽の会社ってミュージシャンがいい曲を作っていいライブをして、っていうモチベーションを維持出来なければ終わるわけじゃないですか?そのモチベーションを維持するために何が必要なのか、僕は社員達に話をするんですよ。本当にちょっとしたことなんだけれども、普通の会社だったら「こういう部分は削ればいい」と言われることもやってあげる。たとえ会社が赤字であってもやってあげる。ミュージシャンにしかわからない、苦労して活動してきた中で培われた思いみたいなものがあるんです。
ほかは例えば「売れる曲を書け」って言われるとミュージシャンってあまりいい気持ちがしないと思うんですよね。「売れる曲を書け」って言うよりも「お前達のこういう部分をのばして、こういう部分を見せてあげたいから、こういう曲書いてみたらどう?」って言われた方がやっぱりいいわけですよ。もしくは、結局は売れる楽曲を書いて欲しいと思っていても、対極的なことも求めるんです。「思いっきりマニアックな曲を書いてくれ、その代わり思いっきりライトな曲も書いてくれ」って。ライトな曲は売れる可能性が高いかもしれないし、マニアックなやつはマニアックなやつでカッコいいかもしれない。ものの言い方一つで自分達にまた別の面があるっていうことを気づかせてあげられる。そういうのをどんどん引き出すようにと伝えています。
こういう話し方は僕がミュージシャンでなければできないと思います。
自分達のバンドが意識的に差別化を図っているポイントは?
いくつかのインストバンドが活躍するシーンの中で違いを出すためには「自分達の得意な部分は何なのか」「そこを思いっきり出さないとダメじゃないのか」っていうのを、二枚目のアルバムを作っている時に気づいたんです。それで自分達の武器って何なんだろうって思ったんですよ。こういう曲を作ったらこういうバンドに似ちゃうし…って、そんなことをやっていても、結局他のバンドには勝てない。「自分達らしい要素をどんどん出していこう」って今のスタイルになってるんです。例えばギターなんだけれども歌のようなメロディーが聴こえてくるところであったり、マニアック過ぎないところ。マニアックなことって突き詰めればいくらでもできるけど、それが果たしてお客さんに届くのかって。お客さんがつかみやすい、簡単に聴かせられる、難しいことをあまりやらない、ってことを意識してます。
ミュージシャンとして音楽をやっていく本当の意味
ミュージシャンとしての河野さんの中にもビジネス的な感覚はあるんですね
そうですね、やっぱりお客さんに届いてなんぼじゃないですか?自己満足でやるなら別にレーベルで出す必要もないですし。「自分達の楽曲に共感してもらう為にはどうしたらいいのか」っていうこともある程度は考えておかないと、結局自己満足の楽曲で終わっちゃう。「バンドって何の為に活動するのか」って根本を考えると、自分達の作った曲をお客さんに聴いて欲しいっていうのがそもそもじゃないですか。その為にはお客さんがどういうものを欲しているのかをいろんな人からリサーチして、それを自分達の楽曲に反映させていく。そう意識しておかないと伝わらないし、伝わらないなら音楽をやる意味が無いですからね。
最後にアーティストを目指している人達にアドバイスをお願いします
僕自身が無名の男で何のノウハウも無いただの一バンドマンからスタートしたんだから、きっとみんなにも可能性があると思うんですよ。その可能性を信じてやって欲しいですね。あとやっぱり勉強した方がいいですね。音楽を聴くっていう行為1つ取り上げてみても、いろんなことに興味を持って『深く』聴く。それを一生懸命やった方がいいと思います。
例えば「ニルヴァーナ」が好きだったら「ニルヴァーナ」がリスペクトしている人を探って、「ダイナソーJr.」だったり「ソニックユース」だったり掘り下げて聴いたりするじゃないですか?聴くことが世の中を勉強することと一緒なんですよね。そこからいろんなことに興味を持って掘り下げる作業をすれば、必然的にいろんなものが学べるようになってくると思います。









